生かさず殺さず、老獪なスナックママ

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例えば、スナック母子家庭。

一度引っ越しのためにお店閉めたら、再婚したという噂が流れたという、スナック母子家庭。


ナイスなネーミングに思わず笑みもこぼれる、こういった看板がズラリと並ぶ飲み屋街。

目にすることも多いが、まだ常連客として足しげく通うには年齢が若い。

 

キャバクラなどとは違う、スナックと位置づけられる飲み屋。
そこで我々の相手をしてくれる女性もキャバクラよりは年齢が高く、30代後半以上は当たり前で、40代、50代も珍しくない。

 

僕は酒をやらないので、20代前半の若い女性が殆どのキャバクラには行かないし、スナックももってのほか。

 

だが、友人に無類のスナック好きがいて、彼にお供して通う事が最近増えた。

 

キャバクラのように年齢が若い女性だと、容姿で彼女たちは勝負してくるから話が下手で、まるで合コンのように常にお互いの自己紹介から入り、こちらの話をうんうん黙って聞くのでもなく、細かな気遣いが出来るわけでもないから、余計に疲れる。
その点、スナックの女性は男性の相手については慣れたもので、余計な詮索もしないし、初めての客でも昨日からの常連客のようにもてなしてくれるし、
上手に場を盛り上げ、男をおだてて、話も黙ってうんうんと聞いてくれる。

 

というのが友人の見解で、それがそのままスナック好きに至っている理由にも繋がっている。

 

酒を飲まない僕としては、若い女性が好きだから飲み屋に通うのではないのか!?

 

というのが率直な意見だが、そこはまたちょっと彼なりの行動原理がある。

 

ところがこのスナックもなかなかの食わせ物。

何度か通っているうちに、その仕組みに気が付く。


当たり前だが、来店すると大抵はボトルを入れるように勧められる。

彼女たちからするとボトルは大変利益率の高い酒商品で、中には一本数万円という店もあるようだが、当然我々にはそのようなお金は無いから、比較的良心的な店に通う、だが、それでも1万円はくだらない。

 

その後の料金の仕組みは良く分からないのだが、頼んでもいないお通し等が並び、女性が一人か時には二人ついて、帰るときのお会計は2万円近くに達することが多い。

 

僕はお茶か水しか飲まないので、友人と二人でいくと1万円近く支払わされる訳だから、驚き以外の何ものでもない。

まさに僕からすれば水スナック。

 

とはいえ付き合いも大事だからそこはケチケチせずに支払うのだが、入店から退店まで常に素面の僕の目からは、スナックのママの老獪さが本当に良く見て取れる。

 

まず、僕は来店時に友人に今日は12時までだよ、と告げ、前回残してあったボトルで今日は帰ろうと策を弄するも、ママが勝手にカラオケを入れて上手に盛り上げて友人をいい気分にさせたり、友人の酒がほんの少ししか減らなくてもすぐに酒を注いで注いで
そうして、席を立つ自由を見事なまでに奪う。

ついている女性も酒を飲むピッチを速め、手元の酒をすぐに空にしてしまう。

(入れたボトルは女性と一緒に飲むのだ)

 

12時を前にして手持ち無沙汰になった友人は、それまでの、あの、自分を殿様に様に扱う空気が忘れられない。

そこで女性が「もうお酒がありませんが」と一言入れ、僕が止めるのも聞かず新しいボトルを友人は入れる。
これでお会計はまたもや2万円近くのコース。

 

最後のお会計も見事で、そのようなスナックに行くときには大抵、他の居酒屋などでも飲んでいるので、お金もたくさんもっている訳ではないのだが、帰るときのタクシー賃くらいは残して飲み代を支払わせる。

 

帰るときにいつもスナックのママは、僕に、「大丈夫?大丈夫?」と尋ねるのだが、それは「お金ある?帰れる?」という意味なのだ。

勿論あるが、その後どこかに行って何かが出来るくらいのお金ではない。
せいぜい牛丼を食べてタクシーで帰るくらいのお金だ。

帰るときの僕の財布には、福沢諭吉くんが一人もいない。

 

ここで多くの人間、特に女性からの疑問だが、どうして、そのように若くもない女性がいる店に、決して安くないお金を払って飲みに行くのか?

 

という点について、僕の上司がかつて漏らした言葉。

 

「ある程度の年齢に行くと、お金を払ってでも褒められたいんだよ」

 

これが、理由です。

 

金を気にするくらいなら行かなければ良いじゃないか、という意見があるのも納得。

 

だが、男というのは弱い生き物で、自分の話を黙ってうんうんと聞いてくれて、褒めてくれて、もてなしてくれる、そういう女性がいるところにはお金を払ってでも通ってしまう生き物なのです。

それは、奥様方やお嬢さん、彼女が話を聞いてもてなしてくれないから。

(女性には到底理解できないのでしょうが)

 

そうなると、男の本能が若い女性を求めるという点もあるが、若い女性は、実はまず料金が高い。

 

地方だとそうでもないかもしれないが、それでも、一人の女性を独占して、彼女との時間を過ごすとなれば、少なくとも40分で1万円くらいのお金は必要だ。
(歌舞伎町で飲んだとき、15分数千円と破格のキャバクラがあったが、結局はお会計が1万円を越えた、理由は分からない)


そして、若い女性はそれだけのお金を払っても自分が求めているサービスを提供してくれるわけでもなく、むしろ上述の友人のように、男性側が気を遣うこともしばしばあるので、そうなると、時間も料金も気にせず、話を聞いてくれる女性のいるスナックに足が向かう友人にもうなづける。

 

根本には、少ない手元資金を何とかやりくりしてでも、飲みたいという気持ちがある。 

 

ただ、ここまで書いてきても分かるように、どちらにしたって決して安くはないのだし、バカみたいにお金をはたいて酒に酔う友人を素面で見ている僕も、「ああ男って」という気持ちにならないわけでもない。

 

あまり飲み屋に行かないので、その料金システムが未だに良く分からないのだが、人によって好みがあり、各々の財布事情と趣向に合った店に、男どもは落ち着いているといって間違いない。


それぞれ限りあるお金をやりくりし、日ごろのストレスを発散している、誠に哀しい生き物。

 

それにしてもこの前いったスナックは凄かった。
僕の隣に座ったのは、70代の女性、しかも彼女はビールを飲んでいて、その分まで支払わされた。

 

料金支払いについては、繰り返すようだが僕も友人もケチをつけたことはない。

 

とはいえ、良くヤフーニュースやその他のコラムで記載される、「銀座ママが見抜く、一流の男性とは」といった記事は、「店側の都合に良い客」とイコールなのだと痛感させられる。

 

zuuonline.com

 

president.jp

 

www.huffingtonpost.jp

 

なんだかんだ言っても、彼女たちもお金を落としてくれる男がいないと生活や人生が成り立たないわけで。

持ちつ持たれつの関係が、あちこちで成立している。

 

友人は引続き、足しげく通うだろう。