グローバル企業の欧米マネジメント層のヒューマンスキルはトップレベルだ

僕は人の上に立ったことが無いのでピンとこないが、利益の上がらない組織で給料以上に働いてもらうためには、やはりそのマネジメント層には部下の士気を高める、モチベーションの向上といったことも当然求められる。

 

例えば利益向上とはいわなくても、マネジメント層が望んでいる会社の方向に社員に歩んでもらうためには、その具体的な手法を実行する必要もあるだろう。

 

 

過去に累積赤字の問題を抱える外資系企業で契約社員として働いたことがあって、いわゆる欧米系のマネジメント層と接する機会があった。

 

そのとき僕は末端の契約社員として勤務はしていたものの、会社そのものはグローバル企業として世界各地に拠点を持っており、毎年、各国拠点企業との交流のもかねて東南アジアのどこかの国でスポーツ大会が開催されていた。

 

数年前にタイで開催されたときに僕も参加し、見事日本代表として僕の会社のメンバーは優勝を勝ち取ったのだが、その日の夜の祝勝会では、大会の話も早々に、実際のところはジェントルメン達のカクテルパーティの様相を帯びていた。

 

立食パーティ形式で一つのテーブルに集まるようにしてアメリカ人社長と欧米系幹部を取り囲み、日本人社員も含めそこでは当たり前のように流ちょうな英語が飛び交っていた。


僕は英語が話せないので彼等が何を言っているのか全く分からなかったし、その空気に飲まれて輪の中に入っていくことも出来ず、まるで仲間外れのような形になってしまっていた。

だからといってその場を離れて別の場所へいくのもそれはそれで失礼に当たるだろうし、とにかく、どうふるまって良いのか分からずに途方に暮れていた。

 

すると、僕の様子に気付いた日本企業のアメリカ人社長は、すっと、自分が立っている場所から少し後退し、僕がそのテーブルに入るための"席"を空けてくれた。

それだけではなく、僕の背中にそっと手を当て、そうして自然に僕が輪の中に入っていくようにさりげなくエスコートしたのだ。

 

無論、その間テーブルで行われている会話は中断されることも無く、空気も全く壊れなかった。

 

アメリカ人社長は言葉にこそしなかったが

「君も入って来いよ」

と、その動作は間違いなく僕にそう語りかけていた。

 

その一連の動作があまりに自然で、嫌らしくなく、それどころ非常に好感が持てることだったため、しばらくその事ばかりを考えていたくらいだ。

 

海外を転々としている国際肌の同僚にその時の話をすると、

「彼等は徹底してコーチングや部下のモチベーションを上げるための、ヒューマンスキルの訓練を受けている」

とこたえた。


考えてみれば当時、その会社で働いている際に欧米系のマネジメント層が我々末端従業員の前で何かしらの話をする時は、その内容がどんなにネガティブなことであっても決して暗く話すことは無く、必ず明るい側面からタッチするようにしていたし、ボディランゲージや表情からもあざとさは一切感じられず

 

「...色々問題はあり決して簡単ではないが、我々はあなた方のために最善を尽くしているし、状況はきっと良くなる」

 

そういうメッセージを力強く、ゆっくりと、よどみなく発信してきた。
そのメッセージは全体を包み、我々の心理面に大きな影響を与えたものだ。


だが結局、勤めていた外資系企業は日本での経営が立ち行かなくなり、その部門丸ごとを売却するか、完全撤退するかの選択を迫られることになり、状況を社員に公表する前に外部の情報機関にそれがもれてしまって、後手後手という形で社員へ応対するような形となった。

 

そこでも徹底して、マネジメント層はよどみなく、物事の明るい側面から話すようにしているのが強く感じられたし、

 

「皆さんの雇用は完全に守られる、私は皆さんと共にある」

 

そう話していたと記憶しているが、数日もすると、そのグローバル企業のギリシャ撤退

を引き受けた倒産請負人のような欧米人が日本を訪れ、高給取りからバサバサと首を切っていった。

 

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笑いながら握手をし、テーブルの下では足の蹴り合い、踏みあい、というのが国と国のネゴシエーション、いわゆる外交の現場らしいが、それを彷彿とさせるような出来事だった。

 

雇用を守ると言いながら首を切っていくのだ、笑顔で。

 

こういう時、グローバル企業に対する社員の行動には国民性が出るもので、もうどこか忘れたが、恐らくスペインだったかもしれないが、約束を平気で反故にする企業のマネジメント層に対してデモ行動を起こしたようだ。

 

彼等は話し方や立ち振る舞いに惑わされることなく、実を取る国民性なのだろう。

僕の見立てでは、アジアでは中国がその様相が強い、中国人も恐らくは黙っていないだろう。

 


日本人の国民性を見抜いて上記のようなマネジメント手法を取り入れているのかどうかそれは分からないが、何だか植民地支配当時の経験が、グローバル企業の各国拠点のマネジメントシステムにそのまま生かされているような気がしてならない。

 

とはいえ彼等の、話し方や立ち振る舞いには舌を巻く。

 

いやらしさや下心を一切感じさせない、「本心」と思わせる能力にとにかく非常に長けているのだ。

 

世界の三大自己啓発と言われる著書も、全て欧米からという点を考えても、彼等が人間に対して徹底的に研究し尽していることの表れだろう。

 

ヒューマンスキルはトップレベルだ、非常によく訓練されている。