今年起きた2つの死
僕の好きなLINKIN PARK の Chester Benningtonが亡くなったのは昨月だが、彼は40代これからという時だった。
周りの知人にも41歳になる前に亡くなった者がいる。
朝になって連絡が取れなくなった知人の家を友人が訪ねると、寝床で眠るように亡くなっていたそうだ。
死因は良く分かっていないようだが、日ごろから睡眠薬と、どうやらある種の薬物を併用していたようで自殺の可能性が高いらしい。
僕も20代のころにその方と話した記憶があるので、かなり衝撃的だった。
知人は、変わった人ではあった。
反面、ユーモアある面白い人でもある。
一方では食い扶持を稼ぐに困って、ゲイではないのだが男娼として働いていたようだ。
外国人相手に主に身体を売っていたようで、そういった趣味が一切ないのに男娼をしていたことは少なからず彼の仲間内でもショッキングな話でもあったようだし、がっかりされてもいたようだ。
とはいえ、近年は何らかの薬物を常用するようになっていたという話からすると、精神的にも不安定だったはずだ。
大変残念でならない。
人生に絶望したのだろうか。
LINKIN PARKのChester Benningtonは世界的にもかなり有名だし、誰もが羨む成功を収め、家族にも恵まれ、多くの人々にも愛された。
ありとあらゆるモノを手にしたはずだ、殆どの人間が手に入れることが出来ずに生涯を終えるモノであっても。
だが、それでも自ら命を断った。
僕の知人は金に困って男娼までするくらいだから、何も持っていなかったのだろうが、やはり命を断った。
死人に口なしだから本当の理由は当の本人しか分からない。
人間というのは、本当に満たされているのかなんてはた目には分からないものだ。
40代に顕著なのかといえば、実際はそうでも無いらしく近年では20代の比較的若い世代の自殺が増加し続けている傾向にあるらしい。
当然ながら20代と40代の人間が自ら命を断つ理由には違いがあるものの、これから40代を目指す僕としては今回の2つの死は心を打つものがあった。
特に、僕の知人については誰にも看取られることなく、ひっそりと亡くなったので、その死すら知らない人間も多い。
誰かを愛し、愛され、そして必要とされた人生だったのかも分からない。
生まれてくる時は、世界中の誰もが彼を歓迎したはずだ。
(Chester Benningtonについてもそれは同じ)
ふと考えてたのだが、では、目の前に自殺願望を持つ人間がいたとして、それを思いとどまらせる、彼等をこの世に生かしておくだけの、具体的な提案、魔法の言葉、そういったモノは果たして存在するのだろうか。
希望を持て
という言葉は、希望を持ち生き続けた結果、「生きていてよかった」という現実を味わうことが出来た人間に初めておとずれる充足感のようなものだから、それを味わったことがない人間に、 "希望" を想像するのは難しい。
その他、どんなに光り輝く言葉でも死を前には何の意味も持たないから、その手の言葉が独り歩きしているだけで一向に彼等の胸に届かないのは、言葉は時に無力であることの証だと思う。
むかし友人が言っていたのは、「自分が死ぬと親がとても悲しむから」だから、決して自ら命は絶たないのだと語っていて、個人的にはそれが最もしっくりくるのだが、それとて、上記の孤独だった知人については有効打とはならない。
何か出来なかったのだろうか、命を断つ以外に他の方法が無かったのだろうか、そう考えてみても答えは見つからない。
だが、今年起きた2つの死は、僕が死に対しての思考を深める重要な機会となったことは間違いない。