村上世彰氏のプロキシーファイトと大塚家具の一連の騒動

村上世彰氏の著書、生涯投資家。

 

 

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書評の通り、村上世彰氏に対するイメージは多少変わるという点はあるが、その著書で触れている東京スタイルとのプロキシーファイトの裏側が印象的だった。

 

 

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2001年当時の東京スタイルは、連結売上高が六百二十五億円、営業利益が四十八億円、営業外利益(受取利息・配当金が主)が五十二億円、経常利益が九十二億円、当期純利益が四十七億円。

かたや資産状況は、純資産が一千五百七十六億円、総資産が一千七百七十一億円。
このうち現預金・有価証券・投資有価証券が一千三百億円。
これに対して時価総額は一千億円強なのだから、極めて割安に評価されていた。
時価総額以上の現預金等を持つ、キャッシュリッチな会社だったのだ。

-中略-

当時、東京スタイルの外国人株主比率は四十%近かった。

-中略-

名簿を分析したところ、外国人投資家のほとんどはファンドだった。
そこで私は、株主価値の向上に資する提案をすれば、彼等の賛同を得られるのではないかと考え始めたのだ。

-中略-

①五百円配当
②自己株式取得

(上記に点を掲げ)私は自分の主張を説明して回ったところ、特に議決権の四十%を占める外国人投資家は私の案に賛成で、

「ミスタームラカミ、よくやってくれた。ありがとう」

と、握手まで求められた。
これで、外国人投資家の持つ四十%の議決権が取れたと思った。
村上ファンドの議決権は十%強だから、間違いなくプロキシーファイトには勝てるだろうという手ごたえを感じた。

-中略-

プロキシーファイトに敗れ)負けるはずなどなかったのに、なぜ負けたのか。
東京スタイルの中間決算時点の株主名簿を取得してみたとき、ようやくその理由を知った。
なんと、頼りにしていた外国人株主の割合が、四十%から二十%後半まで大幅に減っていたのだ。
彼等は、プロキシーファイトが始まって東京スタイルの株価が高くなったのを見て、ここぞとばかりに株を売り払っていたらしい。
私は、自分の読みの甘さを悔やむほかなかった。

 

-生涯投資家より-

 

まるでドラマを見ているような内容だが、単純にここだけでも読み物としては大変面白いし、著者が切れ者であることも充分わかる。


特に、外交人投資家との利害が一致し協力体制が出来たと思っていた矢先、抜け目なく高値で株を売り抜ける外国人投資家の様は、大塚家具のお家騒動におけるプロキシーファイトとも重なる。


確かあの時も、久美子氏が議決権を握るべく外国人投資家を巻き込んだと思いきや、投資家が当該株を売り抜けたのでは無かったか。


記事がもう探せないので定かではないが、日本人同士に争わせ、漁夫の利を得るというやり方は実に巧妙で嫌らしいやり口だ。


だが、ビジネス的にはルール違反ではなく正当な権利を行使したまで。


十七世紀の、イギリスとフランスによるアメリカインディアン排斥の流れにおいてとられた、イロコワ族への懐柔策にも少し繋がるように感じる。

 

上記の外国人投資家が欧米人なのかどうかは定かではないが、漁夫の利を得るというやり方は、恐らく伝統的な方法なのだろう。