大人になってスタンド・バイ・ミーを観ると何とも言えない心情になる
彼こそがこの映画では英雄だ。
あの、少年時代の虚ろで、もろくて、はかない、心の機微みたいなものを、これ以上ないというくらい素晴らしい演技で披露した。
元々は路上でパフォーマンスを披露する程の貧しさだったというから、そこから培われたものなのかもしれない。
リバー・フェニックスには弟がいて、グラディエーターの王役で有名な、ホアキン・フェニックス。
これは全然知らなかった、まさに役者一家ということなのだろう。
スタンド・バイ・ミーには、若き日のキーファー・サザーランド、ジョン・キューザックも出ていて、彼等の演技シーンも新鮮で非常に良い。
それにしても、このスタンド・バイ・ミー。
こんな表情、大人になってからは出来ない。
忘れていた、少年時代の心情を呼び覚ましてくれる。
女性はどういう目線でこの映画を観るのか分からないが、映画の語り口にもあるように、「彼女のいない少年には友人は素晴らしいもの」で、友との小さな世界が、人生のすべてだ。
ある程度の年齢になると、バカをやると社会からはつまはじきにされ、次第に誰からも相手にされなくなる。
常識を身に付けて節度のある接し方を求められる訳だが。
分かるようで、それはなんだかつまらない。
子供のころは当たり前だが、そんなことは一切、考えなかった。
親に嘘をつき、友人同士で隠れて何かしら後ろめたいことをする。
ストーリーは死体を見に行く、というごくシンプルな内容だが、その過程で描かれる
彼等の友人関係、その周囲の、大人を含めた彼等を取り巻く関係、そういったところに強いシンパシーを感じる。
"あの12歳の時のような 友だちはもうできない もう二度と"
未だにこの映画が観られているのは、誰しも、12歳の時のような友だちがもうできないと感じているからだろう。
それが人によっては、10歳だったり、13歳、15歳と異なるのかもしれないが。
ダーリン、ダーリン、というのは、愛する人というので、それは異性に限らず、こういった友人に対しても表現する言葉らしい。
だが、テーマソングでもあるスタンド・バイ・ミーを唄った、ベン・E・キングも亡くなった。
リバー・フェニックスもしかり。
いつまでも若いつもりが、キーファー・サザーランドのセリフのような年齢に近づいてしまった。