リストラされた中年サラリーマンと同じ心境になっている
リストラの嵐が吹き荒れた数年前に、何かのエッセイで解雇された中年サラリーマンが
転職活動において、
「俺は○○会社の部長だぞ」
と発したといった趣旨の内容を読んだ。
もはや○○会社の部長さんという肩書は何の役にも立たず、"何が出来るのか"というのが
かなり重要になる時代の到来、といった内容だったと思われる。
僕は不動産業界で身を立てたいのだが、どうやら30歳を超えると転職は非常に難しいようだ。
35歳転職ギリギリ説みたいなものがあるようで、例え資格を保有していて、様々な知識を持っていて、社会人としてもある程度のキャリアを持っていても、他の会社では使い物にならない、ということらしい。
即戦力となる、実務経験保有者を求めている、ということらしいが。
あるいは、未経験可能でも、あからさまに、若くて、バカで、安く使える人材を探しているところもある。
外部に機会を求めることは困難だと思ったので、内部つまり現会社で不動産が絡む業務への異動を試みたが、それも叶わなかった、理由は、"未経験だから"である。
だがそこには矛盾も多少含まれていて、元々現会社は不動産業務を過去に本業としてたわけではないのだから、社内から人材を公募するのであれば、そもそも未経験者しかいない、というのが実際のところなはずだ。
本当のところの理由は分からないが、組織というのは個人の意見は当たり前のように無視して突き進むので、そこで文句を言っても始まらない。
だが、未だに忠誠を求めてくる矛盾もはらむ。
長くその仕事に携わって、ある程度の成果を出して、周りの業界が見えなくなると、自分の市場価値みたいなものが全く分からなくなることが多々ある。
本来は、未経験で別業界にいくなら、これまでのキャリアは殆ど無視されてしかるべきで、収入にしても、これまでの半分以上に落ち込むのが、第三者から見れば当たり前のこと、だがそれに気づかない。
僕にしてもそうで、だが、外部の会社の不動産営業職を受けた時、履歴書をろくに読みもしないで単なる儀式的な面接が淡々と行われたときには無性に腹が立った。
あんただって、最初は何も無かったんだろ、そのポジションに懸命にしがみついてるだけだろって。
数年前に、日本のある大企業の半導体工場が閉鎖するに伴い、そこで働く従業員の今後の去就についてドキュメンタリータッチで描かれた番組があった。
会社は全員解雇ではなくて、ある程度の選択肢は残すものの、その地域以外の他府県への配置転換か、あるいは早期退職の、実質的にはこの二択しかなかった。
工場で働く多くの人間が、その土地で生活と人生を送っており、中には親子二代で工場に尽くした者もいた。
半導体。
僕には分からないものだが、専門的な技術を示す意味で、国内では数人しかいない、特殊な資格を持つ人もいて、しかしそれは、早期退職をして転職活動を行う際には何の役にも立たなかった。
「専門的過ぎて使い物にならない」と、その人は話した。
多くの人間が土地に残って早期退職を選択し、トラックドライバー、何らかの職業訓練を受ける人、様々だったが、驚かされたのは、工場のマネジメントに携わっていた人が、クリーニング会社に、一従業員として転職したことだった。
「切り替えて全く違う業界に一からいくしかない」
汗水たらして無言で、笑顔もなく黙々と仕事に励んでいたが。
このような、はやりすたりの激しい時代に、何を身に付ければご飯が食べられるのか、誰にも答えは分からない。
"専門的能力"にしても、上記の点から、永遠とすたれない専門的なものは限られている。
不正会計で揺れる東芝でも以下のニュースが流れる。
50代の男性がこの春、仕事を失った。東芝の関東地方の事業所で働いていた。不正会計問題を受けたリストラで、数週間以内に早期退職か配置転換かを選ぶよう迫られた。退職願を書くしかなかった。
所属部門がリストラ対象となったのは数カ月前。不正会計が発覚した昨春は、まさか自分にまで影響が及ぶとは考えもしなかログイン前の続きった。だが、面談で上司に「ポジションはない」と言われ、早期退職を勧められた。
突然のことに「このまま働きたい」と返した。
翌週、2度目の面談があった。残るなら、主力半導体工場がある三重県への配置転換を求められた。
東京郊外で妻と暮らすが、一緒に引っ越したら妻は仕事を辞めないといけない。
単身赴任という手もあるが、定年までと考えたら寂しい。住宅ローンはあと15年。
不安や悩みで、日課だった昼休みのジョギングができなくなった。
東芝の今回の早期退職制度は国内の40歳以上が対象で、
多くは退職金に基本給の30~40カ月分が上乗せされる。
だが、男性の場合、制度を使える期限が、10日ほど後に迫っていた。
追い立てるようだと感じた妻は「ひどい会社だね」とつぶやいた。
高校卒業とともに地方から出てきて会社に入り、30年あまり。
自宅の家電は、少し高くても東芝製を買った。会社に裏切られたようで「悲しく、悔しい」。
残る同僚の顔が浮かぶが、「東芝なんてつぶれてしまえ」と思う。
そんな思いは、福岡県豊前市の半導体工場を3月に早期退職した50代の男性も同じだ。
半導体は韓国や台湾勢との競争が激しく、2012年ごろまで人減らしや配置転換が相次いだという。
「すべては生き残るためだ」と上司に言われ、少ない人手で我慢してきた。その矢先に再びリストラの波。
「話が違う」と憤る。
「会社に人生を賭けるのは危険だ。だから起業をすべき」というのは簡単だ。
そして、そういった提言をするのは、大抵、安定した職業に就くマスコミ関係者、学者、大学教授、良く分からないコメンテーターだ。
彼等はそれで金を稼ぐが、もちろん、発言に対してその責任を取ってくれるわけではない。
とはいえ、何も動かないわけにはいかないので、僕でいえば、自己研鑽や転職活動、異動手段、そして起業も視野に入れ銀行に借入相談をしにもいった。
だがそのどれも、芳しい結果は出ていない。
今の仕事が明日から無くなる訳ではないが、そうなる前に動いても結果が出ることが無くて、そうなると今いる場所に留まるという選択肢しかなくなるわけだが、それはそれで東芝の社員のような末路もあり得る。
一体、どうすればいいというのだ。
「がんばれ」という言葉は何の役にも立たない。
欲しいのはアイデアだが、残念ながら、一時代を築いたおじさんたちにアイデアは何もない。
厳しいが、どんな状況にも抜け道は必ずある、そう信じていくしかない。