悪い人じゃないんだよね
人の悪口を言ってはいけない、批判してはいけない、陰口などはよくない。
そういう話は今もあちこちで言われていて、ちょっとした信仰みたいになっている。
一時はやった成功本のタイトル等で、「あなたが○○になる10のヒント」みたいなものもあったが、そういった本では必ずと言ってくらい、"悪口を言わない"と読み手に語り掛ける。
"あなたに他人の悪口をいうひとは、あなたがいない時はあなたの悪口を言っている"
だから、悪口を言う人そのものが信頼のおける人ではない、というのが言ってはいけないその理由の一つだ。
だが、悪口を言っているのに、周りからの信頼を失わずにむしろ好かれている人もいることに最近気付いた。
例えば、四十路の女性に「あのくそばばあがさ」とか、年長のビジネスマンに「いやー、もうじじいでしょ」とか。
それを聞くと、周りは嬉しそうにする。
僕なりに支持されたり好かれる理由を考えてみたが、それは、周りも同じようにそう思っているからではないかと。
つまり、心の中では「あのクソ野郎」と思っているのに、そのようなことは言えない世の中だから、誰かが代弁してれるとスッキリするし、自分が言ったわけではないからそれに対して責任も負わないで済む。
テレビで毒舌が流行ったのはそれがきっと理由だし、アメリカの大統領選挙で一定数の国民が思っていて口に出せないことをトランプ氏が発言したから、それが国民を喜ばせたから支持された。(アメリカ国民ではないし、アメリカ人一人一人と話したわけでないので細かい内容は不明だが)
それからもう一つ。
悪口を言った後に、「...でも、あの人も悪い人じゃないんだよね」この一言。
この一言が、悪口を言った人の免罪符のようなものになっていて、言った人も言われた人も悪い人間ではないのだと周りに思わせる。
今は人間の心理がこれまでより複雑な世の中になっていて、もちろん根本は変わらないのだろうが、その時その時に応じて求められる言葉と、対応をとることと、一瞬一瞬、ちょっとしたことで変わる人間の微妙な心の動きを読み取る力みたいなものが求められる時代だと感じる。
悪口も、ただただ言い放つだけでは、やっぱり周りの人は離れていく。
こうして考えてみると、誰もが心中に秘めていることを上手に言語化する人が、好かれる、ということなのかもしれない。
それが例え悪口であっても。
そしてたまたま、今は悪口を心中に秘めている人が多い時代ということなのだろう、分からないが。
で、このような心理を読み取ったり、態度や発言には注意をしないといけない、結局そこに帰結するし、これはもう面倒だから話さない、そういう選択肢を僕は選んでしまう方だ。
つまり無難ですね。
だが無難な選択からは、無難な結果しか生まれない。
はー