大抵の人間は10年後も同じ仕事、同じ暮らし

その方が安全だから。
だが、誰が10分後を知っている?


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トム・クルーズが悪役に挑戦した映画、コラテラルで、孤独な暗殺者ヴィンセントが口にした台詞だ。




僕は今の会社に勤めて8年になる。

あと2年経てば10年になるわけだが、典型的なジョブホッパーの僕が同じ会社にこれだけ勤めてこられたのは、収入がこれまでで最も良かったからだ。

仕事は最高級につまらない、金で心を誤魔化しているが、それにしたって年間400万にも満たない額。


しかし、収入で自分を誤魔化すのも限界にきていて、ここ数年は仕事の合間に転職活動しつつ、下らないと思いながらも資格取得に努めてきた。


昨年、ついに意を決して退職を申し出たのだが、上司に何度か慰留され、せっかくの意思表明を引っ込めてしまった。
たが意思表示の甲斐あってか、今年の査定で給料は少しだけ上がった、とても納得できるものではないが。


僕の目の前には、僕の倍以上の期間いまの仕事に従事している人ばかりで、つまり、自分のローモデルを毎日見ているのだが、その光景を眺めるのもかなりしんどい。



とある日、休憩時間に近くのラーメン屋に立ち寄ると、カウンター席に見たことのある初老の男性が食事していた。


なかなか思い出せずにいたが、漫画を読みながらラーメンを啜る姿を見て、僕が二十代後半の時に一年だけ所属していた、新聞社社員であることに気が付いた。
彼は容姿には恵まれないものの倹約家で通し、また独身でもあったから金は結構持っていると周りからよくからかわれていた。

本人もそう言われるのは満更でもない様子だったが、漫画を読みながら一人カウンターでラーメンを啜り、その横に置いてある買い物袋からポテトチップス他ジャンク類が見えたので、恐らく今も独身なのだろう。

早速、手元のスマホで新聞社のホームページを見てみると、たまたま彼が出ている社内報のような記事に行き着いたが、なんの仕事をしているかは分からないものの、記者といった内容でないことは確かで、それは当時と変わらない。


つまり、彼は10年、同じ仕事と同じ生活を送っていることになる。


この彼の様子を見て、冒頭のトム・クルーズの映画での台詞が思い浮かんだ訳だが、同じ状況に極めて近い僕自身、自らを省みずにはいられなかった。


10年前に自分がいまの仕事に就くなんて考えてもいなかったどころか、こんなに長く続けるとも思わなかった。


目の前のローモデルの人達とは違う道を歩むように意識してきたつもりが、結局は同じように歩いている。 


トム・クルーズの映画では、独立の夢を持ちつつも、その一歩を踏み出せずに10年以上もタクシー運転手として勤務し続ける主人公(ジェイミーフォッス)に対して、


「鏡を見ろ。独立の夢、いくらためた?朝からテレビを見て過ごし、夢を記憶の彼方に押しやりそうしてお前はいつの日か気づく、自分が年を取り、夢は叶わないことを。
お前は本気でやろうとしてない」

と、トム・クルーズが厳しい台詞を吐くシーンがある。


主人公に必要なものは金や能力等ではなくて、一歩を踏み出す勇気。


それはいまの僕も同じだ。
もうそろそろなにかを変えなければならない。