ラウンドテーブルの温度差

どの会社も同じだろうが、経営幹部が拠点訪問をし、その際に現地社員とミーティングを重ねることがある。
勤め先の会社も同様で、幹部と現場社員との間でラウンドテーブルを行うことが慣習となっている。

例えば役員クラスが5名くらいいたとして、その下に本部長クラスが数名配置されている場合、その数に応じてミーティングが行われていく。

形としては経営幹部が、「皆さん、何か要望等はございませんか?どうぞ忌憚ないご意見を」というスタンスをとるのだが、こちらの意見が反映されたり、何かが変わることは殆んどない。

つまり、ラウンドテーブルは無意味なものと結論付けられる。

何のためにそのミーティングが行われるのか本当の理由は分からないのだが、経営幹部の立場で考えてみると、



1、経営幹部が更にその上司に「私は社員との交流を持っていますよ」とアッピールするため

2、末端社員に向けて、「私はあなた方の話を聞いていますよ」とアッピールするため

3、ゴルフだけして帰るのも味気ないから、話をして帰る


このようなところくらいしか思い付かない。


デールカーネギーの「人を動かす」をかなり読み込んだのだろうか、名前と顔を必死になって覚えようとしている熱心な幹部の方もいる。
末端社員とはいえ一人の人間だから、顔と名前を覚えてやれば喜び、また明日から頑張って働く。
とでも思っているのか分からないが、僕からすればちょっと古いマネジメント手法を取り入れている人が多いような気もする。

このラウンドテーブルだが、回数を重ねるごとに気付いた点がある。


それは、新入社員または入社歴が浅い社員ほど意見があり、勤続年数を重ねるごとにそれが減っていくというもの。

今では僕も殆んど意見することはない。
これまでの経緯から、言ったところで何も変わらないし時間の無駄だと分かったからだ。

とはいえ、幹部からすれば一従業員の一つの意見なんかよりも、会社全体としての方向性を定めつつ、セクションごとの最適化を図らなければならないのだから仕方のないことではある。

本当に会社を動かしたり何かを変えたいのならば、会社のお金の流れを掴むのは勿論のこと、それだけの権限が無ければ話にならない。

日本の会社はオーナー企業以外は権限が分散されていて、一つの事案を進めるに複数の担当者を巻き込む必要があり非常に面倒だ。

だから結果として何も言わなくなるのだが、入社歴が浅い社員や新入社員は、そのフレッシュさとエネルギーでもって、ガンガン意見を述べる。

そして経営幹部は微笑みを浮かべながらメモを取る仕草を見せる。
それを中堅社員や古参社員が冷めた目で見つめるわけだが。


この異様な光景を、これからもずっと見続けなければならないのかと思うと、心底暗い気持ちになる。


僕のような年齢を重ねた人間も、苦労して長い時間をかけてその座についた経営幹部も、この新入社員のような熱意やひたむきさがあったはず。
僕は経営幹部にはなれないが、このまま年齢を重ねると間違いなくこういった新入社員を斜めに見てしまうだろう。

同じ場所で、経営幹部と、中堅社員と、新入社員との間で行われるラウンドテーブルの温度差といったら表現のしようがない。

そこにいるのは全員サラリーマンだ、ビジネスマンではない。