性病扱いされて釣銭を渡された梅雨の日の午前

昨夜の夜遅く帰宅し、風呂に入っていると陰茎が何だかカユいことに気付いた。

爪先で少しかくと、何だかいつもと触感がおかしい。

覗き込んでみると、大きめの出来物が一つだけ陰茎に出来ていた。

痛くはないが、赤く腫れていてニキビのようにも見える。

 

男というものはちょっとした痛みにも耐えられない生き物らしいが、情けないことに
僕もたった一つのこの出来物に驚愕してしまい、翌朝、仕事もいかずまずは病院へ。


泌尿器科と皮膚科が受診できる個人医院だが、担当医は信頼できる腕前の持ち主。

受付にて若い女性担当者が、「今日はどうしましたか?」と早速質問。

「出来物ができまして」と答えると、なおも突っ込んで「どこにですか?」と聞いてくる。

この時点で嫌になったのだが、僕は自分の人差し指を下に向けて、「ここです」とだけ答えた。

受付の女性もそこは慣れたもので、「ああ」と言って何事を診察表に書き込んだ。

 

そして待つこと約一時間。

 

担当医にようやく名前を呼ばれ診察室に入った僕がすぐに陰茎の異常を説明すると
「では診てみましょう」とその医師はベッドへ促す。

ちょっとした沈黙が流れた後、「...気になる性行為はありましたか?」と質問。

一瞬ドキリとしたが、性行為はあるものの危険行為はこの数か月無いので、「ありません」と答えると、「ヘルペスや、その他の性病では無いようです、その場合はもっとひどいので」と、梅毒やヘルペスその他の性病の症状を画像入り症例集のようなものを紐解いて説明してくれた。

恐らく僕のものは何らかの黴菌が入ったの可能性があるとのこと。

 

ばいきん。
どこから侵入したのだろうか。

 

とりあえず性病ではないことに一安心したのだが、一方で傷跡のようなものが残るのか気になり担当医師にたずねると、電子カルテのようなものに、僕のちんこを描き始め、何やら説明をするのかと思いきや出来物があるところに"○(まる)"と書いて、

「もしかすると何かの後が出来るのかもしれないですねー」

と、今度は処方箋を書き始めた。

どうやら僕に説明するためにちんぽを描いたのではなくて、カルテに残す事が目的だったらしい、実物よりも大きく書いてくれていた。


こうして抗生物質と塗り薬を処方され病院を後にしたわけだが。

僕は何ともなかったものの、ここ最近、若い人の間で梅毒が流行っているらしい。

昔は梅毒も死に至る可能性のある病気だったものの、今やペニシリンの発見と医学の進歩により、初期段階できちんと治療をすれば完治する。

とはいえ、段階ごとに進行していく症状の見た目は衝撃的で、実際に自身のイチモツがその症状に重なっていたら卒倒しかねない。

 

僕の性生活は決して派手ではなく、むしろ少ないくらいなのだが、やはり不特定多数の人間との性行為は避けるに越したことは無いと実感。

 

薬局にて処方箋を提出し、その薬剤師が男性だったこともあるため僕の気持ちを察したのか、彼は担当医師の診断を見ているはずだが、薬の説明の際には、陰茎の「い」の字も出さずに説明してくれ、周りに女性もいたのでこちらも安心して薬を受取ることができた。

 

しかし、お会計の担当は女性で、こちらがお札を出して、うっかりお釣りを受取るために僕は自分の手を出してしまい。

その女性はあからさまに顔を歪め、お釣りを渡す手は僕の手に一切触れずに手のひらにお金を落とした。

 

何だか性病扱いをされたようでショックだったし、その女性があまり美しくなかったことも余計に僕を落胆させた。

 

自分の陰茎に異常を感じても、やはり羞恥心から病院に通院できない男性が一定数存在し、自宅でグッズを取り寄せて自分で性病かどうか調べたりする人もいるようだが、その気持ちも分かる気がした。