脱獄はなにもプリズンブレイクだけではない
大ヒットした連続ドラマ、プリズンブレイク。
現在また新シーズンがスタートし、人気を博しているようだが。
プリズンブレイクは無実の罪に捕らわれた兄を助けるべく、弟が刑務所の設計図を全身に刺青をし、弟自身も刑務所に入所して脱獄を図る、大雑把に言うとそのような物語。
だが、現実に脱獄を図った人間は現代にも割と存在している。
ナショジオチャンネルのこの番組が面白い。
最高度の警備体制を敷く刑務所から脱獄を試みたハロルド・レアード受刑者(まだ生存している)が、実際に語り手となり成功した脱獄の内容を軽妙な語り口でドラマティックに仕立てたもの。
刑務所に入るくらいだから頭は悪そうなものだが、やはりそこは脱獄へ成功した受刑者だけあって舌をまくくらいの頭の良さ。
脱獄には成功したものの、結局は逮捕され再度収監されるのだが、ハロルド受刑者は10代から犯罪に手を染め、殆ど定職に就くことなく犯罪を繰り返しており、手先が器用だったことと、脱獄への執念というか、根本には賢さも手伝って脱獄を果たした。
学歴こそなくても、何かしらの才能が発揮できる場があれば、彼の人生もまた違ったものになっただろうし、失業と犯罪が切っても切り離せない関係にあるのは、彼のような人間をみていると強く実感する。
一方、日本でも脱獄した人間は存在する。
-破獄 吉村昭著-
昭和11年青森刑務所脱獄。
昭和17年秋田刑務所脱獄。
昭和19年網走刑務所脱獄。
昭和22年札幌刑務所脱獄。
犯罪史上未曽有の四度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎。
その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。
これは実在した受刑者を小説に書き上げた、吉村氏の力作。
4度の脱獄とは恐れ入る、プリズンブレイクシーズン4どころではない。
知らなかったがテレビドラマ化もされたようだ、視聴率はあまり振るわなかったのだろうか。
いずれにしろ、脱獄犯が実在するのは驚きだ。
現実は小説より奇なりというが、この破獄はまさにそれで現実にあったことを吉村氏が見事に描き切っている。
恐らくテレビよりも面白い。
それにしても、刑務所かつ脱獄ものはなぜこんなにも興奮させるのだろう。