衰退産業であえて勝負する
日本には各地の陶芸技術があるものの、継承していく若者が不足していることとお金の流れがうまく構築できていないために、産業そのものが衰退してく傾向にある。
そんななか青木氏は、会得した技術を自身の作品に生かすのみならず、積極的に商品開発に取り組み、これまで敷居が高いと見られがちだった陶芸を、例えば中学生でも入手できるような低価格に抑えるような仕組みを考案。
地元岐阜県の技術を取入れ、なおかつ地場産業の協力を得て商品を量産化。
そのための資金はクラウドファンディングで獲得していく、といった、まさに新旧の手法がうまく融合化したスタイル。
衰退した産業とは見られているものの、自身は「未来は明るい」とコメントし、着々とその取り組みを推進する。
衰退していく分野は多くの場合、そこにお金が流れていく仕組みがうまく構築できていないし、いわゆるマーケティングもうまくいっていない。
僕の地元にも有名ない焼き物とその作家さんが多くいるが、その存在自体が一般的なユーザーには浸透していないし、高額な品も多いが、手ごろな価格で入手できるものだって数多くある。
だが認知度が少ないこともありうまくお金になっていない。
最近、後輩と飲み屋に行った時に、"漆"の陶器の普及に力を入れている活動家の話を聞く機会があった。
漆の世界は僕は殆ど分からないが、「いま店舗に出ている漆陶器はその多くが材質も品質も悪い。一般的には漆陶器は高価だから価格を抑えて一般客に購入してもらうためには価格を下げねばならず、そのために粗悪品が出回ってしまう」そうだ。
漆陶器は確かに高額だが、例えば1万円程度のお椀を購入するとそれは殆ど「一生使える」とのこと。
一生モノと考えると、"安い"という見方も出来るし、"手入れが面倒"というイメージが漆にはつきまとうがその方に言わせると「手入れは超簡単」だそう。
商品の認知度の低さ、漆に対しての負のイメージが絡みつき、マーケティングもうまくいっていない典型的な例でやはりお金を産む流れが構築できていない。
また加えてその方が危惧されているのは、漆陶器を開発するにあたり、欠かせない重要な技術があるようで、しかしその担い手が日本ではたった一人しか居らず、その技術継承もうまく進んでいないため、これも業界全体の問題の一つになっているようだ。
「毎日商品をかついで行商人のように売り歩いている」
とその方は熱弁を繰り返していたが、これなども、上述した陶芸家の青木氏のように
新旧の手法をうまく組み合わせることにより、少なくとも今の窮地を打開する方法は見出せそうな気がする。
いずれにしろ簡単ではないものの、「衰退していく分野で勝負しても仕方がない」という発想はからは何も生まれないので、あえてそこで勝負する、という逆転の発想も大事なのかもしれない。