お皿を買うように女性を買う友人
僕の友人は珍しい骨董品や陶磁器、それから○○焼といった、その土地独自の焼き物に目が無く、驚くような価格の品を買っては満足気に自慢する。
いわく、
「この皿のこの焼き印はなかなか出来ない」とか、「このラインがなかなか味のある焼きで」
といった、本人にしか分からないような魅力が焼き物にはあるようで。
最近も、コーヒー用のカップと、自身が食事用に使用するお皿を購入していたが。
二つで2万円を超える金額で、お皿だけでも1万円以上する。
そして彼のリサーチ力も凄くて、インターネットで検索するのは勿論、パンフレット、陶磁器などの作家が誰なのか、今生粋の売れっ子は誰か、そしてその歴史、また実際の店舗巡り、とにかく嗅覚が鋭い。
僕も付き添って焼き物店巡りをしたので、確かに色とりどりのお皿やお椀、コップ、そして特徴のある置物のような、用途が良く分からない焼き物にも魅力は感じる。
だが、金を出して買おうとは、僕は思わないし、彼ほどの情熱もない。
友人は大変満足そうに購入してきたカップと皿を彼の部屋で眺め、僕も一緒にその時間を過ごした。
しばらくしてから友人がムズムズしだし、いわゆるエッチ系の、抜いてくれる店に行きたいと言い出した。
僕は出したばかりだし、体調も悪かったから本当は行きたくなかったのだが、そこは付き合いもあるしお店には一緒に同行した。
そしてここでも、友人の驚くべきリサーチ力が発揮される。
インターネットで事前に検索したお店をリスト・アップし、そこを巡るのだが、そのネット上のリサーチも、
「店長おすすめとかあるよね、あの辺りの文面はちゃんと読む。本当に美人だったら文面に必ず目を通す。ブログも読むし、そのサイトの内容を読むのももちろんだし、評価とかもちゃんとチェックする」
と、ほとばしる情熱を惜しみなく掃き出し、まるで陶磁器を探すようなセンサーが彼の瞳孔からも強く感じる。
もう臨戦態勢であそこもギンギンだ。
そうして訪れた店舗。
5階建てのビルで、その全てが、運用する風俗業者が同一で、例えば5階は人妻、4階は巨乳、3階はギャル、2階はコスプレ、1階はノーマル、といった、これもきちんとそれぞれの用途?に分かれて運営されていた。
友人は3階のギャルを選択し、まるで風呂にでも入ってくるような立ち振る舞いで「イッテてくる」と入っていった。
僕は巨乳の店に行くふりをしてサービスは利用しなかったのだが、約50分後、友人はすっきりした顔で僕の前に表れた。
評価を聞くと「まあまあ」と言い、あれだけリサーチしてもそんなモノなのか、と僕は思ったと同時に、そのお会計が、彼の購入したお皿をやや超えるくらいの金額であったことにも気づいた。
それについては友人自身も、「あー、この金でもう一つ皿が買えたのになあ」と苦笑していたが。
男は、皿を買うように、女を買うのだろうな、そしてその感覚には女性には分からないのだろう、そういったことを思いながら僕と友人は風俗ビルを後にした。