人はなにがきっかけで薬物 "依存症" になるのか
僕はアルコール依存症なのだが、長い間酒を止めているので、自分がなぜ依存症になったのか分からなくなることがある。
今はどんなにストレスがかかっても、僕の中に酒という選択肢はなく、それ以外の方法で忘れるようにしていて、例えばマラソンだったり、意味もなく歩いてみるだったり、人がいないところで叫んでみたりと、とにかく、身を亡ぼすような何かにはけ口を求めるようなことはしていない。
アルコール依存症は最後はしぬしかないからだ。
とはいえ、これだけ誘惑の多い社会になると、これからも道を踏み外さずに生きていけるかは分からない。
そこで今一度、人がなぜ、薬物といったものに依存するのか、そのきっかけについて調べ、考えてみた。
①「一度だけ使ってみたい」という好奇心
②痩せたい、やせ薬、と聞いて
③心理的ストレス、大きなプレッシャーから
④ハイになりたい
概ねこういった理由がきっかけで、最初に薬物に手を出すようだ。
厚生労働省のHPでは、その殆どが "好奇心" から薬物に手を染めてしまう、とあった。
薬物は一度でも使用してしまうと、脳の一部が、その薬物によって植えつけられた強烈な "快楽" "多幸感" によって変化してしまい、それを求めるために薬物欲求が止まらず、覚醒剤等は常用してしまうと最後はそれなしでは日常生活が送れないため依存症に陥る。
薬物は今や多種多様で、ヘロイン、コカイン、覚醒剤、LSD、MDMA、大麻、危険ドラッグ、シンナー、そしてアルコールもそれに含まれ、中でもアルコールや大麻は敷居が低く、大麻の場合は世間一般では "依存性はない" という認識が強い。
本当にそうなのかは、僕はアルコール以外をやったことがないので分からない。
記憶にあるのは10年以上前に、僕を含め友人と三人で飲んでいる時に、うち二人が大麻をやり出して突然笑い出し、朝方までずっと楽し気に、二人とも笑っていたのが印象的だった。
僕も勧められたが、さすがに本能が "ヤバイ" と訴えてきて断った、今でもそれは良かったと思う。
なぜなら、大麻は、それ以外のドラッグへの入り口になる可能性があるからだ。
大麻だけに限らない。
例えば、マーシーこと田代まさしは、逮捕時はコカインと覚醒剤を使用していたが、10代のころはシンナーを使用していたことを告白した。
「僕はシンナーを吸っていたけど、ある時期がきたら止めることが出来た。だから覚醒剤を始めた時も時期がきたら止めることが出来ると思っていた。でも、無理でした」
シンナー
清原和博氏も、現役時代に覚醒剤使用疑惑があったものの、昨年の独占告白の際に、現役中は覚醒剤は使用していないと否定したが、巨人でプレーしていたときに、グリーニーと呼ばれる薬物(疲労感を無くし、身体的能力を向上させる)を使用していたことは認めた。
二人のきっかけを見ると、 "軽い薬物" でも、最終的には覚醒剤、コカイン、ヘロインへと繋がる可能性は高いことが分かる。
一度目の薬物さえなければ依存症になることもないが、マーシーは初めて覚醒剤を使用した理由として、仕事へのプレッシャーからだとその著書で触れていた。
若いころにシンナーをやっていたこともあり、恐らく覚醒剤への抵抗感も低かったのだろう。
清原和博氏も、引退後のキャリアへのプレッシャーがきっかけで覚醒剤を使用し始めた、と告白した。
上述のきっかけの、③心理的ストレス、大きなプレッシャーから という点が二人とも共通している。
僕が酒におぼれたのもそれが理由だし、加えて ④ハイになりたい ということもあった。
普通に生きていると、毎日同じことの繰り返しでつまらない。
また、これだけ閉塞感のある社会で、日々様々な重圧や圧迫を受けていると、どうしても息が苦しくなる。
そういう心の隙間をかいくぐり、巧妙に薬物は人生に侵入してくる。
薬物使用年齢の低年齢化が問題視されているが、一方で、覚醒剤をはじめとした薬物の上得意は、これまでのように若者ではなく、ちょうど清原和博氏のようなある程度の年齢層に達した立派な大人たちであることもまた事実。
30代の若年層から、50代くらいまでの中高年層が新しいターゲットになっているようだ、彼等には何しろお金がある。
そしてちょうど、ストレスのかかる年齢層だ。
ストレスは解消することは本当は出来ないものだから、いかに忘れるか、コントロールするかが大事になってくる。
となると、感情のコントロールが苦手な人は、どうしても薬物依存になりやすいことは否めない。
ストレスがかかりやすく、プレッシャーも感じやすいからだ。
薬物厚生施設に所属するとある女性のドキュメンタリーを観た時も、その女性が感情の渦に巻き込まれ、涙を流し、 "薬物に逃げたい" という葛藤との戦いが描かれていたが、上手に感情をコントロールするのはそのくらい大事なことなのだろう。
いずれにせよ、ちょっとしたことがきっかけで薬物に手を出してしまう可能性は、誰にでもある。
それがどのくらいの代償を支払う結果になるのかは、全てを失った薬物常用者を見れば分かるはずだ。