日本サッカーの歴史が変わる瞬間

昨夜の鹿島アントラーズレアルマドリードの試合はとても素晴らしかった。

反響は凄かったようで、2対4の得点差以上の見ごたえのある試合で、鹿島の公式HPにもその内容が一部記されている。

 

http://www.so-net.ne.jp/antlers/games/51936


ゲーム終了後の柴崎選手の無念そうな顔が印象的だったが。

この試合、僕が観るに勝てる決定的チャンスは3度ほどあった。

 

 

一度目は、後半も終了に近づいたころ、ゴール前相手の裏スペースに抜け出た金崎選手に絶妙なスルーパスが通り、キーパーと1対1になるも、好セーブに阻まれ得点にならなかったもの。

 

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ここを決めていれば、残りの時間、鹿島のこれまでの戦いぶりをみれば、堅守で十分に逃げ切れた。

 

二度目は、後半アディショナルタイム、左サイドからのクロスに飛び込んだ遠藤選手が、ファーサイド側どフリーでボールを受け、右足を振り切りダイレクトボレーシュートを放つも、残念ながら枠に飛ばすことはできなかった。

 

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上の二つは正直、決めていればワールドクラス並みのパフォーマンスとなるし、何としても下剋上を果たすべく金崎選手と遠藤選手には決めて欲しかったが、この試合ではレアルマドリードベンゼマ、セルヒオラモス、マルセロ、そして、クリスティアーノ・ロナウド、各選手が、ここまでの時間ではゴール前の決定機を得点に結びつけることが出来ずにいたのだから、仕方がないといえよう。

 

 

本当の意味での決定的なシーンと僕が考えているのは、延長戦前半6分。


前線からプレスで見事、ボールを奪ったファブリシオが、そのままドリブルで敵陣に切り込みゴール前に進入。
レアルマドリードDF陣はこのとき2名のみ、両選手ともファブリシオにつられていたが、その逆サイドを猛スピードで駆け上がる、どフリーの金崎選手がいたのだ。

ファブリシオが横パスしていれば、フリーで受けた金崎選手は、キーパーと相対するもそのままゴールに流し込むだけだった。
そうしていたら、日本サッカー界の歴史は大きく変わったに違いない。

 

ところが、ファブリシオはフェイントから右足を振り抜くという判断。


シュートは相手DFにそのままブロックされ、この決定機は水の泡になってしまった。

 

ファブリシオも天を仰いだが、その逆サイドで、金崎選手もまた天を仰いだ。

 

ファブリシオはブラジル出身で、おしなべて外国人選手は日本人のようにゴール前でパスはしない。
これはスタイルなのか、彼らが常に結果を求められる世界にいるからゴールが見えたら常にシュートを放つ性質なのか。


それとも、ファブリシオのエゴが出たのか。

 

それは分からないが、いずれにしても、彼は決定的なシーンを台無しにしたと僕は思うし、この日本が誇る一流チームの鹿島で、しかも素晴らしい堅守と全員の献身的なプレーでここまで来た鹿島サッカーの神髄を、彼は理解していなかったのか、と感じる。

 


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2010年のワールドカップの決勝トーナメント1回戦の、日本対パラグアイ戦でも似たようなシーンがあった。


本田がうまく敵陣ゴール前に切り込んだが、その逆サイドを、やはりどフリーの大久保選手が駆け上がっていたが、本田は大久保を無視するようにそのまま自身の左足を振りぬきも、ボールはむなしくゴールをそれた。

 

このシーンを、元日本代表監督のイビチャ・オシム氏は、「彼のエゴは許されない」と著書でも語り、「日本はこの大会、決勝トーナメントでは最も弱い相手と戦い、勝てるチャンスがあった。日本がワールドカップ史上初めてベスト8に進むことは、日本サッカー界の歴史が大きく動くことを意味する重要な試合だった」とも話した。
(正確ではないかもしれないが大体このような意味)

 

それくらいの大事なシーンであり、サッカーとは時に残酷で、他の決定機では外していても、その、唯一といってもいいくらいの重要なところで得点を決めているかいないか、で、その試合のみならず、今後のサッカーの大きな流れも変えてしまうことがあるのだ。

 


鹿島アントラーズレアルマドリードの試合に戻るが、このファブリシオの決定的なシーンの後、目覚めたクリスティアーノ・ロナウドが3点目を突き刺す。


それでも、あきらめない鹿島、選手たちには本当に頭が下がるが、延長前半12分、柴崎選手のFKから鈴木選手が打点の高いヘディングシュートを放ったが、ボールはクロスバーを叩き、これは枠を越えてしまう。


鈴木選手のこの時のヘディングは見事だった、バーに当たったのは運が尽きたとしか言いようがない。

 

そしてダメ押し4点目を、またもクリスティアーノ・ロナウドがゴールに叩きこみ、鹿島アントラーズもここで力尽きた。

 

主審のセルヒオラモスに対するジャッジで疑わしいシーンもあったし、日本が与えたPKについても賛否両論あるが、この試合は、本当に見どころあるものだった。


それだけは間違いない。

 

この試合は世界100か国で中継され、ワールドカップ程ではないにしろ注目度は高い。
今やワールドカップは各選手の品定めのような意味合いを持つが、今回の試合でも、柴崎選手が世界中のチームから熱い視線が注がれていたようだ。

 

我らがジズー(ジヌディーヌ・ジダンレアルマドリード監督の愛称)も、「鹿島アントラーズの何人かはスペインでもプレーできる」と話したとされるが、多少のリップサービスはあるとしても、確かに、鹿島の各選手は凄い試合をした。

 

心から称えたい。

素晴らしかった。